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当然のことだが、私たちは自己だけで完結して存在しているわけではない。
生態系とは、個体を取り巻く環境のことだけではなく、個体そのものの内側にも広がっている。
共生細菌は、免疫系が正常に機能するための陰の立役者になっている。
こうした考え方は近年、免疫機能そのものの理解さえ変え始めている。元来免疫とは、自己と非自己を区別・認識し、非自己を排除する機構だと考えられてきた。しかし、詳細にその機能を見ていくと、免疫系にはもう一つの役割があるかもしれないと思うことがある。それは、私たちが健康に過ごすために必要な微生物(常在細菌)を守り育てることである。
山本太郎『抗生物質と人間-マイクロバイオームの危機』(岩波新書)p.77
つまり個体それ自体が生態系なのだ。
ゆえに、この生態系のなかのひとつの事象(たとえば免疫系)を取り出して、その機構のみを描き出しても、それが生態系全体においてどんな役割を果たしているかはわからない。
ある生態系の内の一部の生物種が人間に災いをもたらすからといって、その生物種だけを退治しても、問題の全面的な解決にはつながらないことがあるということです。なぜなら一部の生物種をその生態系から排除すると、その影響が他の生物たちに及び、ある生物種は個体数を減らしますが、別の生物種の中にはかえって個体数を増やす種も出てくる。
花里孝幸『生態系は誰のため?』(ちくまプリマ―新書)p.80













